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めまい相談医によるめまい外来

めまいについて

めまいやふらつきは、体のバランスを取る仕組みが崩れたときに起こります。めまいには、くるくる回るような回転性のめまい、ふわふわする浮遊性のめまい、目の前が真っ暗になるようなめまい、乗り物酔いのようなめまいなど症状も多岐にわたります。めまいの中には大きく脳梗塞や脳出血等の全身症状を伴うめまいと、耳がつまるなどの耳症状を有する内耳障害を伴うめまいがあります。

しかし日本めまい平衡医学会の認定するめまい相談医は2022年9月現在、全国に757名と、めまいを専門とする専門医が不足しています。当院ではめまい相談医である副院長がめまい検査機器を取り揃えて積極的に治療を行っています。

耳は大きく分けて外耳、中耳、内耳に分けられます。内耳には音を聞く「聴覚」を担当する蝸牛と、体のバランスをとる「平衡覚」を担当する前庭(球形嚢と卵形嚢)、三半規管があります。

重力に対する頭の位置や頭の運動を感ずる耳石器と回転加速度に反応する三半規管という器官があり(図1)、人間は三半規管や耳石器の働きで頭の位置・動きを感じ、目の動きや首・手足の運動を調節することで、姿勢を安定に保つことができます。内耳に異常が起きると、聞こえの障害だけでなく、体のバランスの障害がおこることもあります。前庭、三半規管が病気になると、加速度刺激を受けていないのに加速度刺激を受けたかのような情報が筋肉に送られ、自分の運動を正確に感ずることができなくなり、自分では動いてないのに、自分の体が回ったように、あるいは揺れているように感じてしまいます。つまり、それが「めまい」なのです。

図1.耳の構造

「めまいはどこの病気?」と考えたとき、多くの方は脳の病気を想像されると思います。しかし、すべての年齢層のめまい疾患について統計を取ってみると、良性発作性頭位めまい症(BPPV)が40~50%、脳血管系のめまい1%、原因不明のめまい症10%です。脳の病気はほとんど無いことが分かります。また図の中で多くを占めている良性発作性頭位めまい症は耳が原因のめまいです。(図2)。これが、60歳以上の高齢者統計では、良性発作性頭位めまい症67%、脳血管系めまい1%、原因不明のめまい症15%と報告されています。年齢上昇とともに良性発作性頭位めまい症の割合が高まります。また、年齢上昇とともに原因不明のめまい症も増加します。内耳における耳石器・半規管係とともに体平衡保持に必要な視覚、深部知覚も、加齢とともに機能が低下し、原因も多岐にわたるため確定診断にいたらず、原因不明のめまい症が増加します。

図2 めまいの原因

1.良性発作性頭位めまい症

内耳にある耳石器からはがれた耳石が三半規管に迷い込む病気と言われ、もっとも頻繁に起こるめまい疾患です。しかし良性発作性頭位めまい症は内耳の中でも音を聞く蝸牛と関係のない耳石器、三半規管とごく限られた場所での病気なので、内耳の病気でありながら難聴や耳鳴りを自覚せず、回転性めまいや浮動性めまいのみを訴えます。そのため内耳の病気であるにも関わらず、耳の異常を自覚することができず、耳鼻咽喉科でなく、かかりつけの内科や、総合診療科、緊急性を心配して救急部や脳外科に救急車で運ばれることもあります。 起床時や睡眠時、頭を上げたり下げたりすることで回転するめまいが起こり、吐き気とともに気分不良になります。良性発作性頭位めまい症は全人口の2~3%が一生に一度は経験するめまいの病気という報告もあり、めまいの病気のなかで、もっとも頻繁に起こるめまいです。

特徴とめまいの原因

良性発作性頭位めまい症は、内耳の中で重力を感じるところにあって普通でははがれることのない耳石が、頭の位置を変えたり、頭を低くする就寝時、靴ひもを結んだりといった頭の動きを伴う動作をきっかけに突然起こるめまいです。めまいの続く時間は数秒~数分ですが、同じ動作をすると同様のめまいが起こります。耳石器からはがれた耳石が三半規管に入り込んで三半規管内のリンパの流れを乱すことにより生じるといわれています。加齢や骨粗しょう症、頭部外傷などの物理的外力が加わった際に内耳にある耳石が三半規管に迷入することにより起こります。

治療方法

めまい症状、吐き気や嘔吐が激しい場合は抗めまい薬、制吐薬と呼ばれる薬を使いますが、良性発作性頭位めまい症のめまいは耳石が自然に溶けて吸収されてゆくとともに、数週間~1か月程度で軽快します。耳石を元に戻す方法として、米国の故John Epley先生により(Epley法)が報告され、正確に病態を把握し、浮遊耳石置換法と呼ばれる理学療法を行うことにより治療を行うこともあります。

再発について

良性発作性頭位めまい症はその4分の1から3分の1に再発が見られ、とくに内耳の病気や頭部外傷の既往のある患者さんに多いといわれています。

2.メニエール病

耳鼻咽喉科の外来で良性発作性頭位めまい症に続く第2位はメニエール病です。メニエール病は一側の内耳に原因不明の水ぶくれ(内リンパ水腫)が生じることにより、めまい発作とともに耳鳴り・難聴が起こる病気です。この疾患は良性発作性頭位めまい症のように患者さん自身の努力だけでは治せません。当院のようにめまい相談医のいる病院を受診し、現在患者さん自身がどの治療を受けるべき段階にいるのか、しっかり判断し治療計画を立てたうえで治療を行うことが大切です。(日本めまい平衡医学会ホームページ

★メニエール病の診断で注意すべき点は、町中のクリニックであまりにも単純に「めまい」といえば「メニエールです」と診断されていることです。メニエール病はめまい相談医に相談して、きちんと診断、治療を行うことが大切です。

特徴とめまいの原因

突然回転性のめまいに襲われ、めまい発作とともに耳鳴、難聴が起こる病気で、同様のめまい発作が繰り返されるつらい病気です。頭痛を伴うこともあります。内耳の水ぶくれが原因で、難聴、耳鳴、耳閉感などを伴う事もあれば、伴わない事もあり日々病状が変化します。

音を感じる蝸牛の中にはリンパ液が入っていますが、何らかの原因でリンパ液が増えすぎて水ぶくれ(内リンパ水腫)が生じてメニエール病になるといわれています。リンパ液が増えすぎる原因として、ストレスやウイルス感染が疑われています。特にストレスとの関連も指摘されており、この病気自体がまたストレスになり、悪循環から脱することが難しいめまい疾患のひとつです。

治療方法

初期段階では、患者さん自身の内耳に水ぶくれが生じているので、患者さん自身の全身の水代謝を盛んにすることが重要です。水分を1日1.5~2.0リットル摂取しながら1日20分程度の有酸素運動で利尿と発汗を心がけます。ただし患者さんによっては水分摂取や運動負荷は具合が悪いこともありますので、必ずめまい相談医の診察をうけて治療を行ってください。それでもめまい、耳鳴、難聴が悪化するようであれば、利尿薬、循環改善薬、場合によってはステロイドの内服治療を行います。内服治療でも効果が見られず症状が悪化する場合は内リンパ嚢開放術という手術的治療も考慮します。

ご注意いただきたいこと

メニエール病は、めまい発作を繰り返したり、難聴や耳鳴りが悪化していくこともあります。過労や睡眠不足、ストレスがきっかけとなるケースが多いので、規則正しい生活を送り、疲れをとり、ストレスをためこまないようにしましょう (メニエール病は、きまじめな方や凡帳面な方に多いようです)。めまい発作が起きたら、すぐにしゃがむなどして転倒や事故のないようにしましょう。そしてなるべく早く耳鼻咽喉科を受診してください。

3.前庭神経炎

良性発作性頭位めまい症、メニエール病についで多いのが前庭神経炎です。前庭神経炎は、疲れやストレスで免疫力が低下しているときに、ヘルペスウイルスなどの風邪のウイルスが内耳に入り込み、数日続く大きな回転性めまい発作のあと、数カ月以上の長期間にわたりフラフラ感が続くのが特徴です。

特徴とめまいの原因

ある日突然ぐるぐる回る強いめまいが起こります。耳のめまいの中では最も強く長く続きます。吐き気や嘔吐などの自律神経症状も強く起こります。強いめまいは1週間ほど続き、起き上がれずに横になっていないといけないことが多いです。難聴などの症状は伴いません。強いめまいが治まった後も、ふらふらするめまいが数週間から数か月間続きます。あらゆる年代の人に起こる病気です。

前庭神経炎は何らかの原因で突然片耳の前庭の機能が低下し、左右両側の平衡感覚の情報のバランスが崩れることで起こります。前庭神経炎は主としてウイルスによる前庭神経の障害が原因と言われており、繰り返すことはありません。低下した前庭の機能は元に戻る場合もありますが、障害が残る場合もあります。

治療方法

急性期の治療は、循環改善薬、血管拡張薬、ステロイド薬に加えて、激しいめまい、自律神経症状を抑える抗めまい薬、制吐薬、鎮静薬の内服治療を行います。

4.めまいを伴う突発性難聴

前庭神経炎と同様な障害が内耳におこり、めまいに加えて耳鳴り・難聴を伴う病気が、めまいを伴う突発性難聴です。この疾患も早期に治療を開始するのが重要であり、めまい相談医を受診ください。

特徴とめまいの原因

ある日突然ぐるぐる回るめまいが起こります。同時に片耳の聞こえが悪くなり、耳鳴り、耳の詰まりも生じます。めまいの程度も聴覚の症状の程度も様々です。めまいが強い場合には、吐き気や嘔吐などの自律神経症状を伴います。回転性めまいは1週間ほど続くことが多く、その後徐々に軽快します。30~50歳代に多く見られます。めまいは1回だけで繰り返して起こることはありません。

突発性難聴は何らかの原因で突然片耳の内耳(蝸牛、前庭)の機能が低下することで起こります。その原因はまだよくわかっていませんが、内耳の蝸牛や前庭、三半規管の血流障害が原因のひとつと考えられています。めまいは最終的には改善しますが、聞こえの悪い状態や耳鳴りは改善せずに残ってしまうことがあります。

治療方法

急性期の治療は、循環改善薬、血管拡張薬、ステロイド薬に加えて、激しいめまい、自律神経症状を抑える抗めまい薬、制吐薬、鎮静薬の内服治療を行います。

5.持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)

めまい症は、原因不明のめまい症状に対してつける病名ですが、統計では約1/4を占めています。めまい症を含む慢性めまいの多くは、これまで原因がはっきりしないため治療にも難渋し、長年症状と付き合うことになる患者さんも少なくありませんでした。

例えば最初は短時間回転するめまいで始まった症状であったのに、いつの間にかふわふわする浮遊感に変わり、一日中動けなくなるようなことが起こることがあります。

静止している時は症状が軽く、歩いたり動いたりすると嘔気が起こり、動くものを見るだけでも疲れてしまう、いつまでも消えない浮遊感が続くような病気です。

しかし近年、「持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness, PPPD)」という新しい疾患概念が提唱され、2018年にWHOの国際疾病分類ICD-11に収載されました。正しく診断し治療を行えば、多くの方の症状改善が得られるようになってきています。

特徴とめまいの原因

持続性知覚性姿勢誘発めまいは、ぐるぐる回るような急なめまいを発症後、急性期症状は改善するものの、ふわふわして雲の上を歩いているような状態が、3ヵ月以上にわたってほぼ毎日みられる疾患です。症状を悪くする3つの要因があり、①立ったり歩いたりすること、②体を動かしたり、動かされたりすること(エスカレーター、電車、バスへの乗車など)、③複雑な模様や激しい動きのある映像を見ること、により症状は増悪します。中でも③が特に特徴的で、大型のスーパーやホームセンターの陳列棚を見ることでも症状が悪くなるため、患者さんからは「買い物に行くことができない」といった訴えをよく耳にします。

治療方法

薬物療法やリハビリテーション、精神療法の1種である認知行動療法などを組み合わせることで、症状の改善を期待することができます。しかしながらこの疾患は、まだ正確に原因が解明されておらず、患者さん全員の症状を十分に改善するまでには至っていないというのが現状です。当科では、PPPDの病態解明ならびにより良い検査・治療の確立を目指しています。

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