高血圧
文字通り血圧が高い状態を言いますが、特に症状がない方がほとんどだと思います。
ただ放っておくと重大な疾患に繋がりかねませんので、生活習慣その他内服薬による治療を行い、血圧を適切な状態に保つ必要があります。
なぜ血圧を下げる必要があるのか?
血圧が高いことがなぜ問題なのか?を考える際に、まず血圧とは何かを理解しておく必要があります。
みなさんの身体の中では、心臓から送り出される血液が、血管を通って様々な臓器に行き渡ります。
血圧は血液を送る際にに必要となる圧力ですが、あまり圧が高過ぎる状態が続くと、血管の壁が硬くなってしまいます。
この状態を「動脈硬化」と言いますが、動脈硬化が続くことで、今度は血管がつまりやすくなったり(梗塞)亀裂を生じやすくなります(出血)。
結果として脳梗塞や心筋梗塞、その他脳出血など命に関わる疾患につながる可能性があります。
そのため血圧が高い時には、血管の壁を緩くしたり、血管内の水分を減らす薬(降圧剤)を内服して、適切な圧を保つ必要があります。
血圧管理の目標
「収縮期血圧」は、血管がキュッとしまった時の圧力のことを言います。
逆に「拡張期血圧」は欠陥がホッと緩んでいる時の圧力になります。
病院で測る血圧は(診察室血圧)みなさん少し緊張して血管がキュッと締まるため、普段より5mmHg程度高くなる方が多いのですが(白衣高血圧)その数値が140/90mmHg以上であれば、高血圧という診断になります。
ご家庭で測る血圧(家庭血圧)を指標にする際は、それぞれ5mmHgずつを引いた135/85mmHgを治療開始の目安とします。
診察室血圧 | 家庭血圧 | 方針 | |
---|---|---|---|
正常範囲 | 130/80未満 | 125/75未満 | |
高値血圧 | 130‐139/80-89 | 125-134/75-84 | 生活習慣の見直し |
高血圧 | 140/90以上 | 135/85以上 | 降圧剤内服 |
高血圧診療ガイド2020を一部改変
ただ人によっては、病院で測る血圧は正常なのに、家で測る血圧の方が高いという方もおられるので要注意です(仮面高血圧)。
また血圧は一日の中でも変動しますが、夜寝ている状態から「さぁ、起きるぞ!」という準備のために、早朝に血圧がぐっと高くなる方がいます(早朝高血圧)。
朝に血圧を測るようお伝えするのは、そこを確認することが理由の一つですが、可能であれば朝起きた時と夜寝る前、一日二回血圧を測定することで、経時的な変化が見やすくなります。
ご高齢の方の場合、血圧が下がり過ぎるとふらついて危険ということがあるので、血圧管理を少し緩めに設定することがあります。
また若い方の場合、稀に内分泌疾患が隠れていて、その影響で二次的に血圧が高くなるということもあるので、確認のための検査をさせていただくこともあります。
その他脂質異常症や糖尿病など、他の生活習慣病も血管を硬くする要因となります。
生活習慣の見直しによって改善する余地がある場合は、そちらを優先することもありますので、まずは毎日の血圧確認から相談させてください。
生活習慣の見直し
まずは普段どれくらいの塩分を摂取しているかを、把握しましょう。
脂質異常症のページも参考にしていただければと思いますが、動物性脂肪を控えて、魚類に含まれる不飽和脂肪酸を積極的に摂取することが望ましいです。
- 食塩制限6g/日未満
- 野菜・果物を積極的に摂取する
飽和脂肪酸(動物性脂肪)コレステロールの摂取を控える
多価不飽和脂肪酸(魚、大豆、ごま油など)や低脂肪乳製品を積極的に摂取する - 適正体重を維持する→BMI(体重[kg]÷身長[m]2 )25未満
- 軽強度の有酸素運動(動的および静的筋肉負荷運動)を毎日30分、または週当たり180分以上行う
- 節酒を制限する:エタノールとして男性20-30ml/日以下、女性10-20ml/日以下
- 禁煙
高血圧診療ガイド2020を一部改変
降圧剤の種類
血圧を下げる薬には、血管の壁を緩くする薬と、血管内の水分を減らす薬があります。
前者の中には、血管の筋肉に存在するカルシウム受容体に作用する薬(院長が薬学部時代に研究していたテーマと関連します)、レニン-アンジオテンシン系というホルモンに作用する薬、その他交感神経に作用する薬などがあります。
後者は心臓への負担も和らげることになりますが、良くも悪くも尿がよく出て、日常生活に影響することがあります。
どの薬を最初に選択するかについては、個々の患者さんの状況に応じて、相談させてください。