脂質異常症
コレステロールの異常と中性脂肪の異常を総称して、脂質異常症と言います。
特にLDL-C(悪玉コレステロール)と中性脂肪が、動脈硬化(高血圧のページもご参照ください)の進行に深く関わります。
生活習慣の是正、その他内服薬による治療を行い、進行を予防します。
コレステロール、中性脂肪の管理目標
コレステロール値をコントロールする際、検査値の絶対値のみの議論ではなく、個々の患者さんにおける動脈硬化の発症リスク度合いを考慮する必要があります。
年齢、性別(男性の方がリスク高い)、高血圧や糖尿病を合併しているか、その他血縁のあるご家族に冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)を発症された方がいないかという点が、リスク度合いを考える際の指標になります。
リスク度合い | LDL-C | 中性脂肪 | HDL-C | |
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一次予防 生活習慣の是正 →内服治療相談 |
低リスク | 160未満 | 150未満 | 40以上 |
中リスク | 140未満 | |||
高リスク | 120未満 | |||
二次予防 生活習慣の是正 +内服治療 |
冠動脈疾患既往 | 100未満 (70未満) |
*家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の場合に考慮
脂質異常症診療ガイド2018を一部改変
そういった背景からリスク度合いを低・中・高と三段階に分けて、リスク度合いが高い程、LDL-C(悪玉コレステロール)をより低くコントロールするという基本方針になります。
それ以外にも、以前に冠動脈疾患を発症されたことがある方の場合、より慎重に対応しなければなりません。
その他HDL-C(善玉コレステロール)と中性脂肪も、適切な範囲に保っておく必要があります。
いずれにしても生活習慣の見直しが重要であり、その上で必要に応じて内服治療について相談させていただきます。
食生活の見直し
BMI(体重[kg]÷身長[m]2 )=22を、適正体重と考えます。
逆算すると、身長[m]の二乗に22をかけることで、適正体重が求められます。
求めた適正体重に、身体活動量に応じたカロリーをかけた数字が、一日あたりに必要なエネルギー摂取量になります。
エネルギー摂取量=適正体重×身体活動量*
* 軽労作25~30kcal 普通労作30~35kcal 重労作(力仕事)35kcal~
上記を参考に献立を考えますが、その前に現在摂取しているエネルギー(カロリー)量を把握することが必要です。
必要摂取量より超過している場合、無理して必要エネルギー摂取量まで落とすことを目標にせず、まずは1日あたり250kcal程度減らすことから始めても良いかもしれません。
配分としては、脂質で20~25%、炭水化物で50-60%摂取することを目安とします。
コレステロールが高い食品として、鶏卵、魚卵、レバー、脂身、動物脂(バター)、乳製品などが挙げられます。
インスタント食品など動物脂で揚げているものも多いですし、お菓子類も脂質または卵が多く含まれているものもあり、要注意です。
脂質には動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸と、魚類に含まれる不飽和脂肪酸があります。
基本的なスタンスとして、飽和脂肪酸を控えて、不飽和脂肪酸を積極的に摂取することが望ましいです。
また高血圧のページでも述べましたが、アルコールの摂り過ぎも控えた方が良いです。
エタノール量で20ml/日と考えた場合、以下が目安になります。
ビール(アルコール度数 5%) | 400ml(20÷0.05)≒500ml缶 の8割程度 |
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日本酒(アルコール度数15%) | 130ml(20÷0.15)≒ 1合(180ml)の7割程度 |
ワイン(アルコール度数15%) | 130ml(20÷0.15)≒ ワイングラス1杯 |
運動習慣の見直し
軽度~中程度の負荷を長時間じわっとかける有酸素運動と、短時間にグッと力をかける無酸素運動があります。
前者はウォーキングやエアロバイク、水泳などが該当しますが、酸素を使って、体脂肪を燃焼させます(1日30分以上、週3回以上推奨)。
後者は所謂筋トレで、酸素を必要とせず、糖をエネルギー源として利用します。
筋肉量が増え、基礎代謝が高くなり、脂質代謝やインスリン抵抗性の改善も期待出来ます。
内服加療について
LDL-Cを下げる目的で使用する薬として、スタチン系薬剤があります。
コレステロールを合成する酵素を抑える作用があり、効果の強さにより薬剤を使い分けています。
頻度が多いというわけではありませんが、横紋筋融解症(筋肉が壊れていく)という副作用があるため、効果の確認と併せて、適宜血液検査で確認させて頂きます。
また最近では、小腸でのコレステロール吸収を抑える薬も使用されるようになってきています。
スタチン系薬剤のみでLDL-Cが落ち着かない時に、併用を考慮します。
中性脂肪を下げる目的で使用する薬として、フィブラート系薬剤があります。
LDL-Cも高い時には、スタチン系薬剤も併用することがありますが、その場合先に述べた横紋筋融解症が起こる確率が高くなるとされています。
最近ではその確率(リスク)が低い薬も開発されており(パルモディア®)特にスタチン系薬剤と併用する場合には優先して使用することになります。
その他に魚に含まれる不飽和脂肪酸と同じ成分であるイコサペント酸エチル®も、中性脂肪を下げる目的で使用することがあります(HDL-Cを上げる効果もあります)。
また中性脂肪は直近の食事の影響を受けるので、正確な評価およびモニタリングのため、前日の高脂肪摂取は控えて、当日は朝食抜きの状態で採血していただく必要があります。