感染症について
1.アデノウィルス
アデノウィルスとはどんな病気?
扁桃腺やリンパ節に潜伏し、増殖して悪さをするウイルスです。夏風邪であるプール熱(咽頭炎と結膜炎)を発生させるウイルスとしても知られています。主に子供が感染するウイルスで、感染すると、39℃以上の高い熱・鼻水・のどの痛みなどのいわゆる風邪の症状を引き起こします。
治療方法
いわゆる風邪の症状と同じで、アデノウイルス自体をやっつけるような有効な治療薬はありません。アデノウイルスで引き起こされる風邪の症状に対して、熱を下げたり、のどの痛みをやわらげる薬を処方し、それらを服用して頂きながら治癒するのを待ちます。高熱が続くことが多いため、脱水症状にならないように特に小さなお子様は、水分を多くとって、安静に過ごすことが大切です。
ご注意いただきたいこと
飛沫感染(唾液での感染)を起こしますので、感染後は、人ごみなどは避け、他人に感染させないようにご注意ください。また、小さなお子様で兄弟姉妹がいる場合は特に感染しやすいので、注意してください。集団生活をされているお子様は熱が下がるまでは、登園・登校しないようお願いします。
2.咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)とはどんな病気?
夏にプールで感染を引き起こすことがあるため、プール熱と呼ばれていますが、実際はプールで感染するよりも、手指や飛沫を介して感染することも多いです。原因であるアデノウイルス自体に季節性はなく、最近は夏季に限らず、一年中流行することがあります。幼児や学童に多い病気ですが、成人にもうつることがあります。
主な症状は39℃~40℃の高熱が数日続き、のどの痛みや結膜炎を伴います。
症状は3~7日と長く続きます。
治療方法
プール熱に対してもウイルス自体をやっつけるような治療薬はなく、抗生物質も効きません。普通の風邪と同じように、感染により引き起こされている症状に応じた治療となります。目の症状が強い場合は眼科的な治療が必要ですため、眼科を受診ください。
ご注意いただきたいこと
アデノウイルスは感染力が非常に強く、手指や飛沫を介して感染するので、手洗いやうがいをしっかりすることが大切です。また、のどの痛みが強くて水分をとることを嫌がるお子様も多いため、脱水症状にならないようにやわらかい物や水分を十分にとるようにしてください。学校保健法で出席停止となります。発熱、のどの痛み、結膜炎の症状がなくなってから、2日を経過すれば、登校可能です。わからない場合は医師にご相談ください。
3.溶連菌
溶連菌とはどんな病気?
溶連菌という細菌がのどに感染して起こる病気を総称して、溶連菌感染症と言います。1年を通じて流行します。症状としては38~39度の高熱、のどの腫れや痛み、リンパ節の腫れなどが見られます。また、吐き気や下痢、腹痛などの胃腸症状が生じることもあります。
発症後1日~2日たって、体や手足に小さくて赤いかゆみのある発疹が出てくることもあります。時には扁桃腺に白苔がついたり、舌がいちごのようにブツブツとなることもあります。
合併症
気管支炎や中耳炎、副鼻腔炎といった合併症も起こしますが、ご注意いただきたい合併症には急性腎炎とリウマチ熱が挙げられます。
急性腎炎は溶連菌による呼吸器感染の場合1~2週間後で発症、皮膚感染の場合は3~6週間で発症することが多いと言われています。症状としては血尿、血圧の上昇などが挙げられます。
リウマチ熱は多くの関節の炎症を特徴とし、心臓弁膜症まで引き起こす可能性があります。
治療方法
はな・のどの吸入を行い、炎症をおさえていきます。また、抗生物質等のお薬の処方も行います。抗生物質を2~3日服用することですみやかに解熱することが多いですが、前述した合併症を防ぐためにも10日程度の抗生物質の服用が大切です。完治するまできちんと抗生剤の内服を続けるようにしましょう。
ご注意いただきたいこと
何より安静にして、ゆっくり休養することで回復します。こまめに水分補給をすることで脱水症状を起こさないよう注意してください。
また、のどに刺激を与えるようなものは避け、飲み込みやすく、栄養のある食事をとってください。きちんと治癒するまで医療機関を受診ください。
4.マイコプラズマ
マイコプラズマとはどんな病気?
風邪だと思って治療していたが、なかなか良くならず、長引く咳や発熱が特徴です。また、気付いた時には肺炎になっている場合もあります。
飛沫感染しますので、職場や学校などの集団での感染の可能性もあります。
治療方法
マイコプラズマ感染症は一般の風邪薬が効きにくいため、この病気に対応した抗生物質を処方いたします。重症の場合は総合病院の小児科などの提携病院を紹介させていただきます。
ご注意いただきたいこと
治療後、症状が一時的に回復しても、感染源が体内に潜伏し、他人にうつす場合が多いため、定められた期間のお薬はしっかりと飲むようにしてください。
また、場合によっては治療が長引く場合がありますが、肺炎にならなければ、それほど恐ろしい感染症ではありませんので、完治するまでしっかりと治療を行なってください。
5.ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナとはどんな病気?
乳幼児から10歳ぐらいまでの子供に多く見られる病気で、4歳までに 70%の子供がヘルパンギーナに感染すると言われています。ヘルパンギーナにかかると、突然39~40℃の高熱が出て、のどの奥に小さな水疱(水ぶくれ)がたくさん出来ます。通常熱は2~3日で下がりますが、水疱が治まるのには1週間程度かかります。
治療方法
ヘルパンギーナに対する特効薬はないため、今出ている症状を抑えるためのお薬(解熱剤、吐き気止め、下痢止め)を処方します。熱が下がるまでは家で安静にしてください。また、高熱で夜に脱水症状を起こさないように、しっかりと水分をとるようにしてください。
ご注意いただきたいこと
予防のためにしっかりと手洗いをしましょう。感染してから1ヶ月ほどの間は残ったウイルスが便から出ている可能性があります。まれに大人にもうつることがありますので、症状が治まってもしばらくの間はしっかりと手洗いを行うようにしてください。
6.手足口病
手足口病とはどんな病気?
手足口病は7月をピークに流行する夏風邪の一種です。
生後6ヶ月~5歳くらいの子供がかかることが多く、その中でも1~3歳の子供に多く見られる病気です。1~2日程度、微熱や38℃くらいの熱が出るとともに、その病名の通り、発疹が手のひら、足の裏、手の甲、口の中、ひじ、ひざ、おしりなどに現れます。発疹による痛みやかゆみは少なく、1週間程度で消えます。
ただ、まれにですが、髄膜炎などの脳神経の病気や、心臓や肺に合併症が起こるケースがありますのでご注意ください。
治療方法
発疹の痛みやかゆみが強い場合には、その症状を抑える薬を処方します。
また、脱水症状にならないようにしっかりと水分補給をしてあげてください。
ご注意いただきたいこと
口の中の痛みがひどく、お子様が食事を嫌がる場合があります。そのような場合は、プリンやアイスクリームなど口あたりの良いものを食べさせてあげてください。またのどの痛みのために水分を取りたがらないこともあるため、薄めたお茶や、スポーツ飲料等で十分に水分補給をしてあげるようにしてください
7.おたふくかぜ
おたふくかぜとはどんな病気?
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、ムンプスというウイルスに感染することで発症します。耳の下、頬の後ろ側、あごの下等の片方が腫れ始め、1~2日間で両側が腫れてくることが多いです。片側だけしか腫れないこともあります。最初は腫れている耳の下、頬の下などが痛みます。腫れと痛みがひどいと、食べ物をかめない、飲み込めないなどの症状があらわれます。腫れは1週間~10日間でおさまります。多くの場合、発熱もみられ頭痛、腹痛などがあらわれる場合もあります。
治療方法
ムンプスウイルス自体をやっつけるようなお薬はないため、痛みや炎症をしずめるお薬、解熱剤を服用していただきながら症状がよくなるのを待ちます。
ご注意いただきたいこと
おたふく風邪は飛沫感染(空気感染)するため、外出は避けるようにしてください。
また、おたふくかぜから合併する病気(高度難聴、髄膜炎、脳炎、精巣炎、卵巣炎など)がありますので、下記の症状のある場合は、必ず診察を受けるようにしてください。
- 突然聴こえなくなった、子供がテレビに近づき片耳を寄せて聞いている
- ひどい頭痛、発熱、嘔吐、下痢、けいれんなどの症状がある
- 1週間以上たつのに、耳の下の腫れがひかない
- 熱が5日間以上続いて治まらない
- 耳の下の腫れが赤くなる
- 男性では睾丸の痛み、女性では下腹部痛があります。
check_circleおたふくかぜはワクチン接種により予防することができます。日本では任意接種ですが、世界中の多くの国で予防接種が行われています。重篤な髄膜炎や難聴になるのを予防することができます。日本国内では毎年数百人のこどもがおたふくかぜで難聴になっているとの報告もあり、難聴になると治療法はありません。当院では適切な時期のワクチンの2回接種をお勧めしています。