気管支ぜんそく
喘息(ぜんそく)の診断
喘息(ぜんそく)とは、空気の通り道(気道)が慢性的に炎症を起こすことで敏感になり、発作的に気道が狭くなったり、咳が止まらなくなる症状を繰り返す疾患です。
そう言われると子供の時は確かに小児ぜんそくがあったけど…大人になって忘れた頃に出てくることがあります。
また花粉や寒暖差など(炎症や刺激が変わることによる)季節の影響を受けたり、普段は大丈夫だけど風邪引いた時に咳がよく続く(感染後咳嗽)ということもあります。
こんな症状はありませんか?
- 息をするとゼーゼー、ヒューヒューする
- 煙や冷たい空気などを吸い込むと、咳込みやすい
- 咳や痰が続いて、呼吸をするのが苦しい
- 明け方に症状が起こりやすい
check_circleできるだけ早いうちから適切な診断・治療を受けて、発作が出ないようにコントロールすることが大切です。
大項目1つに加え、小項目のうち1つ以上を満たす場合、喘息を疑う
大項目
喘息を疑う症状(喘鳴、咳、痰、息苦しさ、胸の痛み)がある
小項目(症状)
- ステロイドを含む吸入薬もしくはステロイドの内服で症状が改善
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)
- 3週間以上持続する咳
- 夜間を中心とした咳
- 息苦しい感じを伴う咳
- 症状は1日の中でも変動する
- 症状は季節により変動する
- 症状は香水や線香などの香りで誘発される
小項目(背景)
- 子供の頃も含め、喘息と言われたことがある
- 両親もしくは兄弟姉妹に喘息の方がいる
- 血液中の好酸球が高い
- 好酸球性副鼻腔炎がある
- アレルギー性鼻炎がある
- 最近ペットを飼い始めた
- アレルギー検査でダニ、カビ(真菌)、動物の反応がある
喘息診療実践ガイドライン2022を一部改変
当院での検査・診断の流れ
気管支喘息の診断は、症状の出方や環境因子、家族歴などでまず「疑う」ことから始めます。その上で聴診や、気道の炎症やアレルギーを確認するために呼気NO検査を行います。必要に応じて、血液検査、胸部レントゲン検査、呼吸機能検査を行います
- 問診および病歴の確認
症状の程度や現れ方、ご家族のアレルギー歴、生活環境などを確認していきます。 - 呼気NO検査
息にどの程度一酸化窒素が含まれているかを確認する検査です。気管支に炎症が起きていると一酸化窒素が発生することがわかっているため、この検査で重症度や治療の成果を確認することができます。 - 血液検査
血液を採取して、花粉・ダニ・カビ・ハウスダスト・ペットのフケなどに対するアレルギー(特異的IgE抗体)を確認します。 - 胸部レントゲン検査
気管支喘息の発作を繰り返していると、肺の過膨張が見られることがあります。その他に肺炎の合併など、咳を起こす他の要因がないかを確認するのにも有効です。 - 呼吸機能検査
息を吸った状態から吐ききるまでの呼吸を確認することで、気道が狭くなる現象がどの程度進行しているかを見ることができます。
気管支喘息の治療
喘息の治療は大きく分けて、喘息発作に対する治療と、発作が起きにくい状態をつくる治療の2種類に分類されます。
発作に対しては気管支拡張薬が主流で、内服薬や吸入薬のほかに貼り薬もあります。一方、発作が起きにくい状態を目指す長期的治療では、炎症を抑えるためのロイコトリエン受容体拮抗薬や吸入ステロイドを使用することが一般的です。軽症のお子様にはロイコトリエン受容体拮抗薬(キプレスやオノン、またはシングレア)が効果を示しやすいことがわかっており、安全性の高さも評価されています。
吸入薬について
喘息の治療では、気道に直接薬を届けることができる「吸入薬」が多く使用されます。吸入薬は症状が出ている場所で直接効果を出すことができるため、内服薬や点滴の薬と比べて必要な量が少なく、副作用も抑えることができます。しかし、吸入の方法を間違えてしまうとほとんど効果が出なくなってしまうこともあります。
吸入薬は発作が起きた時に使う発作治療薬と、症状がなくても毎日使う長期管理薬に分けられます。前者は空気の通り道を一時的に広げる薬で、喘息の原因である気道の炎症には効果がありません。長期管理薬により気道の炎症を抑えて、そもそも発作を起こさないようにすることが重要です(「ぜんそく・COPD治療薬」頁も参照ください)。
長期管理薬の投入
長期管理薬の吸入には主に3つの種類があり、年齢や能力に応じて調整する必要があります。
液体の薬
専用の機械が必要になり、吸入に時間がかかりますが赤ちゃんでも使用可能です。
ガス噴霧式(pMDI)
ガスの噴霧と呼吸のタイミングを合わせる必要があり、こどもでは吸入補助具(スペーサー)を使用するほうが効率的に吸入できます。2才くらいから使用できることが多いです。
粉吸入式(DPI)
本人で意識的に強く息を吸う必要があります。小学生くらいになるとできることが多いです。
(注)pMDIにはアルコール、DPIでは乳糖のように、添加されているものが合わない・吸入するとむせる、のようなことがある場合には変更が必要な場合があります。
吸入の方法は、独立行政法人 環境再生保全機構(ERCA)の公式動画チャンネルをご覧ください。それぞれチェックポイントが、正しく吸入しないと吸入効率が非常に低下する場合がありますのでしっかり守って吸入を続けてください。
▼正しい吸入方法を身につけよう1/6 ネブライザーの使い方
https://www.youtube.com/watch?v=KeJtbCJETqY
▼正しい吸入方法を身につけよう2/6 pMDI+スペーサー(マスクタイプ)の使い方
https://www.youtube.com/watch?v=2kpD6F8YZCQ
▼正しい吸入方法を身につけよう3/6 ネブライザーの使い方 pMDI+スペーサーの使い方
https://www.youtube.com/watch?v=ZP3BiQTqImg
▼正しい吸入方法を身につけよう5/6 DPIディスカスの使い方
https://www.youtube.com/watch?v=GjTw637Jj4s
check_circle気道の炎症はすぐには治りません。症状がでないからとすぐに吸入をやめてしまうと効果が期待できません。こどもがやりたい!と思えるように吸入のマスクに好きなキャラクターのシールを貼るなど、毎日の習慣に組み込んで継続できるようにしましょう
気管支喘息の予防
気管支喘息の原因となるのは感染症や気道に炎症を起こす物質(ダニ、ハウスダスト、ペットのフケ、カビなど)であることが言われています。
気管支喘息の予防及び治療に際して重要なのは、
- 喘息の発作を誘発する物質・状況をできるだけ少なくすること
- 内服薬・吸入薬を医師の指示通り適切に使うこと
- 重い発作が起きた際には速やかに受診すること
などです。
check_circle当院では適切な診断・治療を行っています。喘息かなと思ったら早めに受診してください。
咳喘息
咳喘息は、気管支喘息とは異なって喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)がなく、咳が主な症状となります。
ただ気管支が過敏になっているという点は似ており、冷たい空気や煙などが刺激となって咳が出ます。
呼気NO検査で数値が高くなりますが、呼吸機能検査で異常は認めません。
気管支を拡げる薬で効果を認めますが、症状により、気管支喘息と同じくステロイドを含む吸入薬を使用します。
症状が治まれば治療薬を止めることも可能ですが、3-4割程度は気管支喘息に移行すると言われており、慎重に経過をみる必要があります。
のどが原因で起こる咳(アトピー咳嗽、感染後咳嗽)
喘息とは異なりますが、同じように空気の通り道が刺激されやすくなっている病態としてアトピー咳嗽と感染後咳嗽があります。
アトピー咳嗽は、アトピー性皮膚炎などのアレルギーがある方、血液中の好酸球が高い、その他ハウスダストやダニなどアレルギー検査で陽性反応がある方などで起こり得る疾患です。
咳喘息と同様に咳がメインの症状ですが、気道にある咳の受容体が敏感になっていることで起こると考えられています。
咳喘息とは異なり、気管支を拡げる薬は効かないというのが大きな違いです。
アレルギーによる炎症が原因なので、アレルギーを抑える飲み薬や吸入または内服ステロイドは効果があります。
また風邪を引いた後に咳だけが続く状態を感染後咳嗽と言います。
原因が完全に解明されていない部分もあり、また複数の要因によるとも考えられていますが、いずれにしても上気道で炎症が起こって敏感になっていることが一因です。
他の疾患が除外出来て初めて疑うことになりますので、聴診その他胸部レントゲンで肺炎などないかも併せて確認します。
症状に応じて咳止めその他、気管支喘息や咳喘息に準じた対応を考慮します。
(「ぜんそく・COPD治療薬」のページもご参照ください)。