胸が痛い
「胸が痛いです」と聞くと、呼吸器科の医師は少しドキッとします。と言いますのも「急に痛くなった」とか「息苦しさもあります」といった背景があると、肺が原因でも急ぐ場合がありますし、そもそも肺が原因ではなくて、心臓が原因かつ循環器科による早急な対応が必要である可能性もあるからです(「息苦しい」ページもご参照ください)。
どういった状況で、どんな痛みなのか?
「痛み」に関してはそれ以外の症状というよりは、どんな痛みなのかという情報の方が重要かもしれません。ただ時間経過が非常に重要なのは、他の呼吸器症状と同様です。胸の痛みに関しては、まずは「胸の表面で起こる痛み」と「胸の奥で起こる痛み」に分けると理解しやすいです。肺自体は痛みを感じる神経がなく、前者の場合は、肺そのものではなく外側にある胸壁(筋肉、肋骨、横隔膜を含む)で問題が起きていることが多いです。チクチクするまたは刺すような痛みとして感じられ、咳や呼吸に伴い痛みが出ることがあります。原因としては後述する感染に伴う肺炎/胸膜炎、帯状疱疹その他肋間神経痛などありますが、いずれにしても原因となる病気の対応と共に、痛み止めで症状対応を併行します。
奥の深い所が原因で痛みを生じている場合、例えば痛みの程度がそれ程ではなく「食後に胸やけもして」といった背景がある場合は、逆流性食道炎の一症状かもしれません。ただ圧迫感がある、胸が締め付けられる、その他焼け付くような痛みとして、強い症状が続く場合は重大な心臓や血管の病気が原因である可能性も考えられ、時に循環器科による早急な対応を要します。またこれらの痛みは、胸だけでなく、背中の痛みとして感じることもあります。
また「突然起こる」胸の痛みは注意が必要です。心臓の血管に問題が起きている場合もそうですが、肺の血管に関連する病気として「肺塞栓」と呼ばれる疾患があります。血の塊が血管を詰めてしまうことが原因ですが、詰めるのが肺の血管なのか、心臓の血管なのかという違いだけで、心筋梗塞同様に早急に対応する必要があります。
その他に「気胸」と呼ばれる、肺から空気が漏れて、肺がへしゃげてしまう疾患があり、程度にもよりますが一刻を争う時があります。突然胸が痛くなった時、特に痛みの程度がひどい、または息苦しさや意識がボーっとする症状が伴う場合は、躊躇せずに救急車を呼んでください。
胸の痛みの原因と対応
上記の情報を元に痛みの原因を突き止めていきます。当クリニックで対応が想定される疾患として、感染に伴う肺炎/胸膜炎や、帯状疱疹その他肋間神経痛の治療および症状対応があります。先にお話したように肺自体には神経がありませんので、肺炎も外側の胸膜に炎症が広がった時に初めて、痛みとして感じられます。程度によっては入院を要しますが、まずは胸部レントゲンや血液検査でその判断を行います。
その他気胸の場合は、安静にしていれば自然に改善することもありますが、程度によっては入院で脱気する処置が必要になります。一般的に息苦しさがなければ「待てる」ことが多いですが、いずれにしても胸部レントゲンで程度の判断を行う必要があります。
また原因が肺であれ心臓であれ、太い血管が原因で痛みが生じている場合は、総合病院での早急な対応が必要です。繰り返しになりますが痛みが強い、その他に息苦しさを伴う、または意識がおかしい場合は一刻を争いますので心に留めておいてください。
胸の痛みの原因
1.胸の表面で起こる痛み
- 肋間神経痛
- 帯状疱疹後痛(帯状疱疹が活動性ある時は、抗ウイルス薬も必要)
- 肺炎/胸膜炎(原因菌に応じた治療を要する)
2.胸の奥で起こる痛み
- 逆流性食道炎
- 気胸
- 肺塞栓
- 狭心症/心筋梗塞
- 大動脈解離
3.その他
- 肋骨骨折など整形外科的な原因
- 過換気症候群(心因性)など