耳鼻咽喉科検査で異常がないのに続くふわふわ感 ― PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
「ずっと船に乗っているような感覚がある」
「ふわふわ・ゆらゆらする感じが続いている」
「MRIも異常なしと言われたのに、めまいが治らない」
「人混みやスーパーに行くと気分が悪くなる」
このような症状に悩まされていませんか?
めまいの検査を受けても「異常なし」と言われ、原因がわからないまま不安を抱えている患者さんは少なくありません。実はその症状、「PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)」という病気かもしれません。
PPPDは比較的新しい概念のめまい疾患で、一般的な検査では異常が見つかりにくい一方、患者さんの日常生活へ大きな影響を与える病気です。「気のせいでは?」「ストレスだけの問題では?」と思われてしまうこともありますが、適切な診断と治療によって改善を目指せる可能性があります。
今回のコラムでは、PPPDとはどのような病気なのか、なぜ検査で異常が出ないのか、どのような検査・治療を行うのかについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
「ふわふわする」「揺れている感じ」が続く…それはPPPDかもしれません
PPPDとは?
PPPD(Persistent Postural-Perceptual Dizziness:持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、慢性的に続く“浮動感”や“揺れ感”を特徴とするめまい疾患です。 2017年に国際的な診断基準が定められ、近年注目されるようになりました。
典型的には、
- ふわふわする
- 地面が揺れる感じがする
- 体が不安定に感じる
- 雲の上を歩いているような感覚
などを訴える方が多くみられます。
一方で、ぐるぐる回る回転性めまいとは異なるケースが多いのも特徴です。
PPPDの特徴とは?
「常にめまいがある感じ」が続く
PPPDでは、症状が数か月以上続くことがあります。完全に強いめまいが続くわけではなく、
- なんとなく不安定
- 頭がぼーっとする
- 足元が頼りない
という状態が慢性的に続く方も少なくありません。
立っている時・歩く時に悪化しやすい
- 立位
- 歩行
- 人混み
- スーパー
- 駅
- スマホやパソコン画面
など、“視覚情報が多い環境”で悪化する傾向があります。
「疲れているだけ」と思われやすい
検査で異常が出ないため、
- 自律神経の乱れ
- ストレス
- 気のせい
と考えられてしまうこともあります。しかし、患者さん本人にとっては日常生活へ大きな支障をきたすつらい症状です。
PPPDはなぜ起こるの?
きっかけとなる「最初のめまい」
PPPDは、ある日突然発症するというより、「最初のめまい」をきっかけに始まることが多い病気です。
- 良性発作性頭位めまい症
- メニエール病
- 前庭神経炎
- 強いストレス
- パニック発作
- 体調不良
などがきっかけになることがあります。
脳が“めまいに敏感”な状態になる
本来、人間は、耳(前庭)、目、筋肉や関節の感覚を統合してバランスを取っています。しかしPPPDでは、めまいを経験した後に脳が過剰に警戒する状態となり、わずかな揺れや視覚刺激にも敏感になってしまうと考えられています。
つまり、「脳のバランス調整機能の過敏化」が関係している病気です。
なぜ検査で異常が出ないの?
構造的異常ではなく“機能的異常”だから
PPPDでは、MRIやCTで脳に異常が見つからないことが多くあります。それは、脳出血や脳腫瘍のような「形の異常」ではなく、脳のバランス機能の使い方に問題が起きている状態だからです。
「異常なし=症状がない」ではありません
検査異常がないため、
- 異常なしと言われた
- 原因不明と言われた
- 気持ちの問題と言われた
という経験をされる方も少なくありません。
しかし、PPPDは国際的にも認められているめまい疾患であり、決して“気のせい”ではありません。だからこそ、まずは危険な病気が隠れていないことを丁寧に確認したうえで、PPPDを診断していくことが重要です。
「異常なし」をしっかり確認するために――当院で行うめまい検査
PPPDの診断では、「他の病気ではないこと」を確認することが非常に重要です。当院では、めまい相談医として専門的な診察・検査を行っています。
日本めまい平衡医学会「めまい相談医」による診療
当院副院長は「日本めまい平衡医学会・めまい相談医」の資格を保有しています。
この資格を持つ医師は全国的にも限られており(2026年4月時点、全国で900名)、めまい診療に関する専門的知識と経験を有しています。めまいは原因が多岐にわたるため、専門的な視点から丁寧に診断を進めることが重要です。
詳しい問診
PPPDでは、症状の経過や悪化する状況が診断の重要な手がかりになります。
- いつから始まったか
- どんな時に悪化するか
- 過去に強いめまいがあったか
などを詳しく確認します。
聴力検査
メニエール病など耳の病気を確認するために行います。
平衡機能検査
体のバランス機能に異常がないか確認します。
眼振検査
目の動きを確認し、耳や脳の異常を調べます。
PitEye(ピットアイ)検査を導入
当院では、「PitEye(ピットアイ)検査」を導入しています。
PitEye検査とは?
PitEyeは、赤外線カメラを用いて眼球運動を詳細に解析する検査です。
めまい診療では、“眼の動き”が非常に重要な情報になります。
肉眼ではわからない異常を確認
患者さん自身では気づかないわずかな眼球運動異常を検出することで、
- 良性発作性頭位めまい症
- 前庭機能異常
- 中枢性疾患
などの診断に役立てます。
PPPD診断にも重要な役割
PPPDでは、「重大な異常がないこと」を確認することが重要です。PitEye検査を含め、必要な検査を丁寧に行うことで、患者さんが安心して治療へ進めるようサポートしています。
PPPDの治療方法とは?
PPPDは、「治らない病気」ではありません。適切な治療によって改善が期待できます。
病気を理解することが第一歩
PPPDでは、「危険な病気ではない」と理解すること自体が症状改善につながることがあります。原因不明への不安が、さらに脳の過敏状態を強めてしまうことがあるためです。
前庭リハビリテーション
バランス機能を整えるためのリハビリを行います。適度に体や視線を動かすことで、脳が過剰反応しないよう再学習を促します。
薬物療法
症状や状態に応じて、抗不安薬、抗うつ薬(SSRIなど)、めまい改善薬などを使用することがあります。
生活習慣改善
睡眠不足、過労、ストレスなどは症状悪化につながることがあります。規則正しい生活や適度な運動も大切です。
「異常なし」と言われても、つらさは本物です
PPPDの患者さんの多くは、
- 検査で異常なし
- 原因不明
- ストレスと言われた
という経験をされています。しかし、症状が続いている以上、「つらさ」は確かに存在しています。周囲に理解されにくいからこそ、一人で悩み続けてしまう方も少なくありません。
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、慢性的なふわふわ感や不安定感を特徴とする病気です。 PPPDは専門的な診察によって診断・治療が可能な病気です。
当院では、 めまい相談医の資格を持つ副院長が、専門的なめまい診療を行っています。 また、PitEye(ピットアイ)検査を導入し、詳細な眼球運動解析を含めた精密な評価を行っています。
「どこのクリニックを受診しても原因がわからなかった」
「異常なしと言われたけれど、つらさが続いている」
「このままずっと治らないのではと不安」
そのような方こそ、どうかあきらめないでください。
めまいには、専門的な視点で初めて見えてくる原因があります。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
