呼吸器内科耳鼻咽喉科いびきと鼻詰まりは密接に関係している? 睡眠時無呼吸症候群と「鼻の通り」を調べる重要性
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
「最近、いびきがうるさいと家族に言われる」
「朝起きても疲れが取れない」
「夜中に何度も目が覚める」
このような症状に心当たりはありませんか?
いびきや睡眠中の呼吸の停止は、単なる睡眠の問題ではなく、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」のサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群というと、肥満や喉の狭さなどが原因というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし実際には、鼻の病気や鼻詰まりも、睡眠中の呼吸に大きく関係しています。睡眠時無呼吸症候群の方の約4割には、何らかの鼻疾患があるとされており、鼻閉(鼻詰まり)が睡眠中の呼吸に影響しているケースも少なくありません。
当院では、呼吸器内科と耳鼻咽喉科、それぞれの専門医が在籍しています。睡眠時無呼吸症候群を呼吸の視点から評価するだけでなく、鼻の通りや鼻疾患の有無も確認しながら、患者さん一人ひとりに合った治療を検討しています。
今回のコラムでは、睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気なのか、鼻腔通気度の検査もセットで実施することのメリットや、治療法などを、わかりやすく解説していきたいと思います。
いびきの原因は「喉」だけではない? 実は鼻詰まりも関係しています
いびきは、睡眠中に空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸によって周囲の組織が振動することで生じます。
鼻が詰まっていると、鼻からスムーズに空気を取り込むことが難しくなります。すると、口呼吸になりやすくなり、睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込みやすくなるなど、気道が狭くなる要因が増えることがあります。また、鼻呼吸がしにくい状態では、睡眠中の呼吸そのものに負担がかかります。
鼻詰まりの原因には、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻中隔弯曲症、鼻ポリープなど、さまざまな病気がありますが、中には「鼻が詰まっていることが当たり前になっていて、自分ではあまり気づいていない」という方もいます。
「いびきがあるから喉の問題」と決めつけるのではなく、鼻の通りも含めて呼吸全体を評価することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群とは? 眠っている間に呼吸が止まる病気
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり、弱くなったりする状態を繰り返す病気です。
代表的なものは、気道が狭くなることで起こる「閉塞性睡眠時無呼吸」です。眠っている間に舌の根元などが喉の奥に落ち込み、空気の通り道が狭くなることで、呼吸が一時的に止まります。
呼吸が止まると、体内の酸素が不足し、脳が一時的に覚醒することで呼吸を再開します。しかし本人は、毎回「目が覚めた」と自覚するとは限りません。そのため、夜間に何度も呼吸が止まっていても、「よく眠れている」と思っている方もいます。
このような状態が毎晩のように繰り返されると、睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下につながります。
さらに、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病、心血管疾患などとの関連も知られており、単なる「いびきの病気」と考えて放置することはおすすめできません。
こんな症状があれば睡眠時無呼吸症候群かもしれません
睡眠時無呼吸症候群では、次のような症状がみられることがあります。
代表的な症状
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
- 寝ている間に「ガッ」と息をする、むせる
- 朝起きたときに頭痛がある
- 起床時に口が乾いている
- 日中に強い眠気がある
- 仕事中や運転中に眠くなる
- 集中力や記憶力が低下したと感じる
- 夜中に何度も目が覚める
- 十分寝ているはずなのに疲れが取れない
特に、「大きないびき」と「日中の強い眠気」がある方は注意が必要です。また、本人は症状に気づいていなくても、家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と指摘されて受診するケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群の方の約4割に鼻疾患? 「鼻の通り」を確認する意味
睡眠時無呼吸症候群の診療では、呼吸が止まる回数や酸素の状態を調べることが重要です。
一方で、睡眠中の呼吸を考えるときには、「鼻からどのくらい空気が通りやすいのか」という視点も欠かせません。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約4割には鼻疾患があるとされ、鼻閉を伴っている方も少なくありません。
鼻が詰まっていると、口呼吸になりやすくなります。口呼吸は、睡眠中の気道の状態に影響を与え、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させる要因になることがあります。
しかし、「鼻が詰まっているから睡眠時無呼吸症候群になった」と単純に判断できるわけではありません。
睡眠時無呼吸症候群には、肥満、顎や顔の骨格、舌の大きさ、扁桃腺の肥大、加齢など、さまざまな要因が関係しています。
だからこそ、睡眠中の「呼吸状態」と「鼻の通り」をそれぞれ検査し、総合的に評価することが重要です。
「鼻腔通気度検査」とは? 鼻の通りを数字で評価する検査
鼻詰まりの程度は、本人の感覚だけでは正確に評価できないことがあります。そこで行われる検査の一つが「鼻腔通気度検査」です。
鼻腔通気度とは、鼻の中を空気がどの程度通りやすいかを示すものです。鼻腔通気度検査では、鼻の中を通過する空気の流れや圧力などを測定し、鼻の通り具合を客観的に評価します。
「自分では鼻詰まりを感じていないけれど、実際には鼻の通りが悪い」という場合もあります。反対に、鼻が詰まっていると感じていても、検査によって鼻の通気状態を確認することで、症状の原因をより詳しく検討できることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査と鼻腔通気度検査を組み合わせることで、
- 睡眠中にどの程度呼吸が止まっているのか
- 酸素の状態にどのような変化があるのか
- 鼻の通りがどの程度悪いのか
- 鼻疾患が睡眠中の呼吸に影響している可能性があるのか
といった点を総合的に評価できます。
「いびきがあるから、とりあえずCPAP」というように、一つの原因だけに注目するのではなく、鼻から喉、睡眠中の呼吸までを含めて評価することが、より適切な治療につながります。
睡眠時無呼吸症候群の検査はどのように行う?
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは問診を行い、いびきの有無、日中の眠気、睡眠中の呼吸状態、既往歴などを確認します。そのうえで、睡眠中の呼吸状態を調べる検査を行います。
代表的な検査として、自宅で睡眠中の呼吸や血液中の酸素濃度などを測定する「簡易検査」があります。より詳しく睡眠状態を調べる必要がある場合には、睡眠中の脳波や呼吸、酸素濃度などを確認する精密検査が検討されることもあります。
さらに、鼻詰まりや鼻疾患が疑われる場合には、耳鼻咽喉科的な診察や鼻腔通気度検査などを組み合わせます。このように、睡眠時無呼吸症候群の検査と鼻の評価をセットで行うことで、患者さんの呼吸状態をより正確に把握し、治療方針を検討しやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群にはどのような治療がある?
睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の程度や原因、患者さんの状態によって異なります。
CPAP療法
代表的な治療がCPAP療法です。専用のマスクを装着し、機械から空気を送り込むことで、睡眠中に気道が塞がるのを防ぎます。中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、重要な治療選択肢となります。ただし、鼻詰まりが強い場合には、マスクを装着しても「空気が通りにくい」「息苦しい」と感じることがあります。そのため、CPAP療法を行う場合にも、鼻の状態を確認し、必要に応じて鼻疾患の治療を検討することが大切です。
口腔内装置(マウスピース)
軽症から中等症の一部の患者さんなどでは、睡眠中に下顎を前方に移動させる口腔内装置が選択肢となることがあります。適応については、睡眠時無呼吸症候群の重症度や歯・顎の状態などを考慮して判断します。
生活習慣の改善
体重増加が関係している場合には、減量や生活習慣の改善が治療の一部となることがあります。また、飲酒や睡眠薬などが睡眠中の呼吸に影響する場合もあるため、生活習慣や服薬状況について医師に相談することが重要です。
鼻疾患の治療
アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症など、鼻詰まりの原因となる病気がある場合には、その治療を行います。鼻の通りを改善することが、睡眠中の呼吸やCPAP療法の継続しやすさに影響する場合もあります。
「いびきだけだから」と放置しないでください
いびきは、誰にでも起こることがあります。
しかし、いびきが毎晩続いている場合や、呼吸が止まっていると指摘された場合、日中に強い眠気がある場合には、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
また、鼻詰まりがある方では、「鼻が詰まっているだけ」と考えず、睡眠中の呼吸状態も確認することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群は、本人が気づかないまま進行していることがあります。
「いびきが気になる」「朝起きても疲れが取れない」「鼻が詰まって眠りにくい」と感じている方は、一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。
当院では、呼吸器学会専門医・指導医である院長と耳鼻咽喉科専門医である副院長が連携し、それぞれの専門を活かした診療を行っています。
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸器内科だけ、あるいは耳鼻咽喉科だけの視点ではなく、「睡眠中の呼吸」と「鼻・喉の通り道」を総合的に評価することが重要です。いびきや睡眠中の呼吸に不安がある方、鼻詰まりを伴う方は、症状を放置せず、まずは当院までお気軽にご相談ください。
